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【書評】言葉の魂の哲学(古田徹也)、言葉の力の正体とは!?

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【書評】言葉の魂の哲学(古田徹也)、言葉の力の正体とは!?

「言葉の魂の哲学」とタイトルだけ見れば、「うぅ、哲学か。難しそう」と感じるかもしれない。

だが、いざ読んでみると「哲学だから難しいと思ったけど、意外と自分の生活に身近な話題で面白い!」とどんどん読み進められる書籍である。

サントリー学芸賞を受賞している本でもあり、この書籍を読むことで現代における私たちと言葉との向き合い方について考えを深めることができる。

言葉を選び取るとはどういうことなのか、たくさんの情報があり溢れている現代社会を生きていくのに大事なことを学べる書籍だ。


言葉の魂の哲学を読んだ感想&あらすじ

書籍を簡単にあらすじを紹介すると、

第1章:ゲシュタルト崩壊から言葉とは何かを論じる。

第2章:ウィトゲンシュタインの言語論から言葉の使用や理解について評価する。(言葉を使用するのと理解するのでは大きな違いがあるということが学べます。)

第3章:カール・クラウスの言語批判から言葉に魂が宿る瞬間・言葉を選び取る責任を考え、現代社会の私たちに必要なことを伝える。(言葉に力が宿る瞬間のからくりについて考えを深められます。また私たちが自分の言葉を用いる大切さを学べます。)

といった感じにまとめられます。

この書籍では言葉に魂が宿る、つまり言葉の力とは何かを哲学的に探求し、言葉の持つ力やその影響を深く考察しています。

言葉がどのように私たちの思考や感情に影響を与えるのか、そしてそれをどう活用するかがテーマとなっています。

ここでは第1章に焦点を合わせて、内容と感想をわかりやすくお伝えしていきますね。

第1章では中島敦「文字禍」とホーフマンスタール「チャンドス卿の手紙」主に2つをテーマにして、ゲシュタルト崩壊に注目しています。

ゲシュタルト崩壊というのは、まとまりがあったのものがバラバラになっていく感覚のことを指します。

これでは意味がしっくり来ないので、私たちの生活に置き換えてみましょう。

何かの手続きや書類で漢字を書いているときに、「あれ?この漢字こうだっけ?いや、こうだったかな?」と漢字をど忘れしたことが誰しにもある経験でしょう。

その時に忘れた漢字を思い出そうとさらにその漢字を書いて見たり、じーっと見つめたりしますよね。

そうすると「あれ?この線あってるかな?」「今書いている漢字は存在するの?」といったようにさらに不思議な感覚に襲われたことがあるでしょう。

この感覚こそが、ゲシュタルト崩壊です

書籍では言葉の意味がゲシュタルト崩壊によって失われ、言葉が単なる線や音の集合体になることを取り上げている。

言葉を強く意識するとで、言葉の魔力や霊に囚われていく作品の人物から哲学をしていくので、

哲学に馴染みのない方でも小説を紐解いていく感覚でこの本を読むことができる。

他の哲学本と比べると、本の序章で小説を中心に話題を展開しているので親近感を持ちやすく、哲学することへの興味に繋がります。

哲学をしてみたいという方におすすめの本です!

第1章でのポイントとしては、

言葉は私たちの日常や経験といった現実を表現するものであるが、100%現実を表現するには不完全なものであるということです。
私たちは何かを経験したり、振り返ったりして、それらを他者に伝えようとするとき、あるいはあることについて考えたりするときは基本的に言葉を用いる必要があります。
このことから言葉は私たちの生活や経験を表現しているものだと捉えることができますね。
しかし、この言葉が不完全なものであるということにみなさんは疑問を持ちませんか?
なぜなら日常の生活で言葉を使っていて、困ることなんてないに等しいでしょう。
だから言葉は完璧なものじゃないの?と考えられます。
果たして本当に言葉は完璧なものなのかを考える上で、芸術活動に注目してみましょう。
書籍ではゴッホの絵に触れながら紹介されていますが、みなさんが有名な作家の絵を見て「おーー!これはすごい!」と感動した経験を思い返してみてください。

ちなみに芸術活動は言葉を使わない活動だと書籍で述べられています。

私たちが言葉を通さずに、直接作品をありのまま感じているとう点がそうだと言えますね。

そして、その感動を言葉に表現して、その言葉を読み返してみてください。
感動を表現した言葉から絵画を見たときの感動を完璧に表現できているでしょうか?
絵から感じた感動とその感動を表現した言葉を比べてみたら、完璧に自分の感動を表現しきれないことに気づきます。
「こんな感じがいいよね」と表現しているのであれば、「こんな感じ」は言葉で表現できない言葉の不完全さをまさに表しています。
書籍では、芸術活動で得られる感覚を「幸福な時間」と表現しており、この幸福の時間を言葉で表現すると、芸術作品から感じる生き生きとした感覚が失われると述べられています。
私たちが毎日使っている言葉には、表現しきれない感覚があるというもどかしさこそが言葉の不完全さということですね。


この書籍から学んだこと

主にこの本から学んだことは2つ!!

・コミュニケーションや環境の重要性

・自分の言葉を用いることの大切さ(自分の言葉で喋ることの意味の深さ)

1つ目はコミュニケーションや環境の重要性です。

私たちが使っている言葉というものは、不完全なものであります。

なのに私たちは何の問題もなく、普段コミュニケーションを取ることができている。

それは相手との関係、あるいは今いる周りの環境、自身や相手の心境等とあらゆることが絡み合うことで私たちは言葉を使い、生活を送ることができています。

つまり、私たちが言葉の力を感じるときはこれらの要素が絡み合うことでストーリーを作り出し、言葉がそのストーリーのタイトルやキーワードとなるからこそ、言葉の力が生じます。

映画やドラマでも「今の言葉感動したな」と感じるのには、ストーリーにぴったり合う言葉が選ばれたときです。

この学びを実践しようとするならば、会社でプレゼンするときや何か大事な発表をするときにストーリーを意識して、言葉を選び取ることがポイントになります。

 

2つ目は、自分の言葉を用いることの大切さです。

私たちが普段使っている言葉はそれはあなたが本当に選び取った言葉なのでしょうか?

書類やレポートを書く際に用いる言葉は、少なからずあなたが普段の生活で受け取る言葉に影響しています。

例えば、新聞を読むのが好きな人ならば、無意識の内に毎日読んでいる新聞の著者に似た言葉選びや文章になっています。

あなたの言葉選びは、普段から情報を取り入れているメディアの影響を受けたものになっているかもしれません。

つまり、あなたの言葉選びは日常生活でよく利用するメディアや本によって形成されています。

情報がたくさん溢れる現代社会で自分に合った正しい情報を選び取っていくには、自分自身の言葉選びが重要になります。

何が言いたいかというと、普段利用するメディアや本はあなたの言葉を作るのでどのようなメディアや本に普段から触れるかが大切だとうことです。

普段の生活に哲学を取り入れてみるのもいいですね!哲学は根本的なことを考えていくので触れる言葉の幅が広がったり、言葉の質が高くなります。

また、この2つ目の学びに関しては、第2章の内容が大切になってきます。

言葉を理解するとはどのようなことなのかを捉え直すことで、自分の言葉を用いることに繋がります。

本当に個人的な見解なのですが、この第2章の内容は第2言語を学ぶ上でも大切なポイントになることにも気づきました。

僕がオーストラリアでワーホリをして、第2言語をどのように習得したかを再認識することにも繋がりました。

哲学の面白いところは自分の生活に当てはめて考えてみると、新たな気づきや発見ができることだと僕は思います。

今年1番気持ちの良い哲学をこの書籍を通してすることができたなと感じております。

古田徹也さんありがとうございます!

是非もっと詳しく知りたい方や自分なりにじっくり考えて読みたい、哲学を始めてみたいという方はこの書籍を読んでみてくださいね!



書籍の情報

【書籍名】言葉の魂の哲学

【著者名】古田徹也

【出版社】講談社

【出版日】2018/4/10

【ページ数】254ぺージ

【目次】

第1章 ヴェールとしての言葉ー言語不信の諸相ー

第1節 中島敦「文字禍」とその周辺

第2節 ホーフマンスタール「チャンドス卿の手紙」とその周辺

第3節 まとめと展望

第2章 魂あるものとしての言葉ーウィトゲンシュタインの言語論を中心にー

第1節 使用・体験・理解

第2節 言葉の立体的理解

第3節 「アスペクト盲」の人とは何を失うのか

第4節 「言葉は生活の流れのなかではじめて意味をもつ」

第3章 かたち成すものとしての言葉ーカール・クラウスの言語論が示すものー

第1節 クラウスによる言語「批判」

第2節 言葉を選び取る責任


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